リフレッシュレートや解像度はスペック表で映えますが、「映像の質」を決定づける要素としてパネル方式も重要です。
にもかかわらず、店頭ポップには小さくIPS・VA・TNと書かれているだけで、多くの人が“何となく”で選んでしまう。声を大にして言いたい、パネル選びは用途で決めよ。
本記事では、各方式の構造から長所短所、本音でおすすめできるベストバイまで紹介して行きます。読み終えた頃には「IPSかVAかTNか?」という択思考を捨て、自分のワークフローに最適な解を選び取れるようになるはず。

IPS / VA / TNとは?

- IPS=色再現と視野角の王者。欠点は黒浮きとコスト。
- VA=高コントラストの職人肌。ただし応答速度には要注意。
- TN=速度特化のスプリンター。色と視野角を犠牲にして安さと速さを手に入れた。
パネルは“トレードオフ”の塊。万能は存在しない。コスパ厨もロマン派も覚悟して選びましょう。
方式別の構造図(視覚イメージ)

それぞれの特徴について概念図で表しています。
実際には層がもっと多くなりますが、ややこしいので理解優先でシンプルに描いています。
IPS(In‑Plane Switching)
[バックライト]
↓
[液晶TFT]
┣━━ 分子が“面内”で横回転(=In‑Plane)
↓
[カラーフィルター]
↓
[保護ガラス]
- 分子が水平方向に回転→視野角が広い。
- 光路が長く黒浮きが出やすい。
VA(Vertical Alignment)
[バックライト]
↓
[液晶TFT]
┣━━ OFF時:分子が垂直に立ち光を遮断
┣━━ ON時:傾いて光を通す
↓
[カラーフィルター]
↓
[保護ガラス]
- OFF時にほぼ完全に光を遮る→コントラスト比が高い。
- 応答に時間がかかりやすい(中間調遅い)。
TN(Twisted Nematic)
[バックライト]
↓
[液晶TFT]
┣━━ 分子がねじれ(Twist)て光路を変化
↓
[カラーフィルター]
↓
[保護ガラス]
- 構造が単純→コストが安く、応答速度が速い。
- 視野角が狭い&色変位が顕著。
視野角・コントラスト・応答速度で徹底比較
指標 | IPS | VA | TN |
---|---|---|---|
視野角 | ★★★★★ 178°/178°実測 | ★★★★☆ 178°/178°理論値だが輝度シフトあり | ★★☆☆☆ 160°/150°前後、上下で色反転 |
コントラスト比 | ★★☆☆☆ 1000:1 前後 | ★★★★★ 3000:1〜5000:1 | ★☆☆☆☆ 700:1 前後 |
応答速度 (GtG) | ★★★★☆ 1‑5 ms | ★★☆☆☆ 4‑8 ms(中間調10 ms超も) | ★★★★★ 0.5‑1 ms |
価格帯 | 中〜高 | 中 | 低 |
代表的用途 | デザイン、映像制作 | 映画鑑賞、MMORPG | eスポーツ、予算特化 |
VAのコントラストは夜の映画鑑賞で真価を発揮するけど、白背景のブラウジングだと黒浮きが目立って萎えがち。
1. 視野角の違い
IPS は上下左右ほぼ色変化がなく、デュアルモニターでも並べたとき色が揃う。VA は水平視野角はそこそこだが垂直方向で輝度シフト(暗く見える)現象が起きる。
TN は少しでも角度をつけるとネガポジ反転。
2. コントラスト比
VA は“真っ黒”を作るのが得意で、OLED に並ぶレベルの 5000:1 製品も出てきました。
IPS は構造上バックライト漏れが避けられず 1000:1 が限界。
TN は白飛びと黒浮きが同居する悲しき宿命。
3. 応答速度
TN が 1 ms 未満を叩き出し、IPSも技術革新で1ms製品が増加。
VA はMPRTを謳っても中間調の遅さが残像を生む。eスポーツで VAが少数派なのはこのせい。
長所と短所 — トレードオフの真実

それぞれの長所、短所を紹介していきます
IPS
長所
- 視野角と色再現が群を抜く。
- 最新世代は 240 Hz 超え&1 ms に対応。
短所
- 黒浮き問題。HDR映像で暗部がグレーになる。
- 同スペックなら最も高価。
VA
長所
- コントラスト比は液晶最強。
- 144 Hz 以上の高Hzモデルが豊富&IPSより安価。
短所
- 応答速度のバラつきが大きい。ゴーストが残りやすい。
- 視野角はスペック表ほど良く感じない。
TN
長所
- 価格破壊。24インチ144 Hz が2万円台。
- 応答速度は依然最速。ULMBとの相性◎。
短所
- 発色と視野角が犠牲。写真編集は論外。
- 27インチ以上は選択肢が激減。
用途別おすすめパネル&モデル例
用途 | 推奨パネル | 具体的モデル | 理由 |
デザイン・写真編集 | IPS | Dell UltraSharp U2725D | 27″ QHD 120 Hz/工場キャリブレーション済み |
eスポーツ | TN | ASUS TUF Gaming VG259QR | 24.5″ 1080p 280 Hz/0.5 ms |
MMO・RPG長時間プレイ | IPS or VA | LG 27GR95QE OLED | 黒の深さ&1 ms 応答で没入感 |
写真編集×TN を選ぶのは「寿司にケチャップ」をかけるレベルの冒険。止めはしないけど、責任取れません。
迷ったときのチェックリスト
- 作業内容を可視化:ブラウザ 70%+ゲーム 30%なら IPS120 Hz が無難。
- 部屋の照明環境:暗室映画派なら VA の高コントラストが映える。
- PCスペックとの相談:RTX 4090 を積みながら TN1080p はもったいない。
- 将来の拡張性:HDMI 2.1 端子が必要か? USB‑C DP Alt は?
まとめ — パネル選びの最終結論
- 色・視野角重視 → IPS
- 黒の深さ&コントラスト → VA
- 速度とコスパ → TN
万能は存在しません。作業時間を円グラフにしたとき、最も大きいピースに合わせてパネルを選べば後悔は少なくなります。
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