ワイヤレス充電は「遅い・発熱する」と敬遠されがちでしたが、2025年の“Qi2”の登場で状況は一変しました。
iPhoneシリーズを皮切りにAndroid陣営も採用を表明し、アクセサリ市場は急拡大中です。本記事では仕組み・メリット/デメリット・Qi1/MagSafe との比較・対応機種・おすすめ充電器・将来ロードマップを紹介してきます。
Qi2とは?誕生の背景と仕組み
進化のタイムライン
年 | トピック | 出力上限 |
---|---|---|
2023 /1 | CES2023で Qi v2.0(15 W) 発表 | 15 W |
2024 /9 | iPhone シリーズ発売、Qi2 初搭載 | 15 W |
2025 /7/23 | Qi v2.2.1(通称 Qi2 25 W) 公開、14 デバイスが先行認証 | 25 W |
仕組みを簡単に
- 磁気リングで“ピタッ”と吸着
- 送電・受電コイルが同心円に整列→電力ロス▲30 %、発熱▲5~8 ℃。
- クロスプラットフォーム
- Apple が MagSafe 技術を WPC に寄贈し、iOS/Android 共通規格に。
- 下位互換
- Qi2 充電器は Qi1 端末も安全に充電(速度は端末依存)。
要点:Qi2 は「MagSafe の快適さ」を業界全体に開放し、さらに 25 W 高速化で“有線レス”への最後の壁を崩す規格です。
Qi2が優れる5つのポイント
- 安定 15 W/最大 25 W
- 規格で出力を固定。Qi1 の 7.5 W〜12 W ばらつき問題を解消。
- 高効率 & 低発熱
- 磁気アラインメントで平均効率 80 %前後、発熱は Qi1 比で 5 ℃前後低下。
- アクセサリ多様性
- リング磁石を活かしたスタンド・車載ホルダー・モバイルバッテリーが急拡大。
- クロス OS 採用
- iPhone はもちろん、HMD Skyline や Pixel 10(予定)など Android 端末も続々対応。
- 将来拡張性
- ノート PC/タブレット向け 40 W 超プロファイルが検討段階にあり、長期の進化余地が大きい。
Qi2 vs Qi1 vs MagSafe:スペック比較表
特性 | Qi2 15 W | Qi2 25 W | Qi1(EPP) | Apple MagSafe |
方式 | 誘導+磁気 | 誘導+磁気 | 誘導のみ | 誘導+磁気 |
出力 | 15 W 固定 | 25 W 固定 | 5–15 W 可変 | 15 W(iPhone) |
アラインメント | ◎ 磁石 | ◎ 磁石 | △ 手動 | ◎ 磁石 |
実効効率 | 78–82 % | 80–84 % | 65–75 % | 75–80 % |
下位互換 | Qi1 端末充電可 | Qi1 端末充電可 | — | — |
表の読み方:Qi2 25 W は規格上 25 W ですが、初期ロットは 20〜23 W 程度で動作する製品もあります。いずれも Qi2 15 W 端末とは完全互換なので、両対応充電器を選べば買い替えコストを抑えられます。
対応スマホ・アクセサリ早見表(2025 7月時点)
カテゴリ | モデル | Qi2 出力 | メモ |
スマホ | iPhone 15 シリーズ | 15 W | 出荷時対応 |
iPhone 13 / 14 シリーズ | 15 W | iOS 17.2 以降で有効化 | |
HMD Skyline | 15 W | 世界初の Android Qi2 端末 | |
Pixel 10(予定) | 25 W? | 2025 8月発表見込み | |
Galaxy S25 / S26 | 15 W* | *Qi2 Ready=磁石ケース要 | |
充電器 | Anker MagGo Pad | 15 W | Qi2 認証済みパッド |
Ugreen MagFlow Power Bank | 25 W | 世界初の Qi2 25 W 認証 | |
Spigen OneTap Pro 3‑in‑1 | 15 W | 机上フルセット充電台 | |
Satechi Car Vent Qi2 | 15 W | 車載スタンド向け | |
Belkin WIZ023 Stand | 15 W | ファンレス・就寝向き |
ポイント:Qi2 25 W 充電器は 2025 年末〜2026 年初に据置パッドが本格流通予定。今すぐ購入するなら 15 W 品を選び AC アダプタを 30 W 以上にしておくと、25 W 端末への布石になります。
Qi2 25 W 徹底解説とロードマップ
Qi2 15 W は既存コイル設計の限界近くでした。Qi v2.2.1 ではコイル径の最適化と制御プロトコル統合により、23–25 W/効率 85 %前後を達成。今後のロードマップは次の通りです。
フェーズ | 期間 | 主な動き |
Pilot | 2025 Q3 | 14 デバイス限定認証、量産試験 |
Ramp‑up | 2025 Q4〜2026 Q2 | 据置パッド・車載器が量販、Pixel 10/Galaxy Z Fold 7 で 25 W 実機確認? |
Mass | 2026 下期以降 | iPhone 17/18 が 25 W 対応→普及加速 |
なぜ 25 W が重要か?
- iPhone 15 (有線 20 W) と体感差ゼロへ
- 30 分で 0→50 % 充電=昼休みに“満タン半分”回復
- USB‑C PD 45 W 以上の AC アダプタが流用可能
おすすめQi2充電器5選【用途別】
シーン | 製品 | 特徴 |
旅行・出張 | Anker MagGo Pad | 110 g/ケーブル一体、ホテル利用に最適 |
デスク一括 | Spigen OneTap Pro 3‑in‑1 | iPhone+Watch+AirPods を同時充電、角度調整可 |
車載ナビ | Satechi Car Vent Qi2 | 強磁力+ボールジョイントで視認性◎ |
外出先でPCも | Ugreen MagFlow Power Bank | 10 000 mAh+25 W Qi2+65 W 有線 PD |
寝室静音 | Belkin WIZ023 Stand | ファンレス&LED 消灯設定で睡眠の邪魔なし |
各製品は Qi2 ロゴの有無/給電ポートの入力要件(最低 30 W)を必ず確認しましょう。特に 25 W モデルは AC アダプタ側が 45 W 以上でないとフル性能を発揮できません。
まとめ:買い替え&買い時ガイド
- iPhone 13/14/15 は既に 15 W Qi2 対応。充電器だけ先行導入しても損なし。
- Android 勢は 2025 年後半の Pixel 10 / Galaxy S25 で本格合流。ケース選びに磁石対応を忘れずに。
- 25 W 時代:2026 年には充電器価格が下落。USB‑C PD 45 W 以上アダプタ一本で“有線卒業”が現実的に。
結論:Qi2 15 W で既に“有線 20 W クラス”の体感。25 W 世代が普及すれば 10〜15 分 の充電で 1 日分をまかなえる世界が来ます。2025 年は 15 W 充電環境を整え、2026 年の 25 W 本格普及に備える──それが賢い戦略です。
よくある質問(FAQ)
- iPhone 12 以前は Qi2 充電器で速くなる?
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いいえ。ハード側に磁気アラインメント用のリングがないため最大 7.5 W の Qi1(EPP) 動作に留まります。ただし磁石付きケースを併用すれば位置ズレによる速度低下を軽減できます。
- USB‑C アダプタは何ワット品を買えば安全?
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USB‑C アダプタは何ワット品を買えば安全?
A. 15 W 運用なら PD 30 W 以上、25 W 運用なら PD 45 W 以上を推奨。定格ギリギリで使うと電圧ドロップで発熱が増えるので余裕を持たせましょう。 - ケース越し充電で速度が落ちるのはなぜ?
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樹脂厚 2 mm 以上・金属プレート・MagSafe 対応を謳わない磁石リングは磁束を阻害します。2 mm 以下のポリカーボネートまたはシリコンがベスト。
- バッテリー劣化は早まらない?
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Apple/Google は「ソフト管理下の 37 ℃以下では有線と差はない」と回答。Qi2 は温度センサで 40 ℃超を検知すると自動で電流を絞ります。
使用シーン別・導入ケーススタディ
自宅デスク
- 構成例:Spigen OneTap Pro 3‑in‑1 + PD 65 W GaN 充電器
- メリット:iPhone を立て掛けつつスタンバイ表示→時間・カレンダー確認。Watch や AirPods も同時給電で配線ゼロ。
- 注意点:モニター背面 USB‑C ハブから給電すると電力が足りず 7.5 W に降格するケースあり。必ず AC 直結で。
ベッドサイド
- 構成例:Belkin WIZ023 Stand + 純正 30 W USB‑C アダプタ
- メリット:ファンレス&LED 消灯設定で就寝の妨げにならない。15 W でも一晩で 100 %充電余裕。
- 注意点:メガネ型リングのケースは横置きにすると吸着力が弱く、落下の可能性があるため縦置き推奨。
車載ナビ
- 構成例:Satechi Car Vent Qi2 + シガー PD 45 W アダプタ
- メリット:Google マップを表示しながらでも 15 W 給電維持。マグネット吸着で片手着脱。
- 注意点:夏場車内 50 ℃ 超では 10 W へ自動降格。エアコン吹出口に固定し、風を当てると安定する。
技術ディープダイブ:25 W 実装の鍵 “ダイナミック電圧ネゴシエーション”
Qi v2.2.1 では送電側(TX)と受電側(RX)が 10 ms 間隔で電力・温度を相互通信し、電圧 5–15 V / 電流 1.7–2.2 A を動的制御します。これにより高速域では 15 V×1.7 A = 25.5 W、温度上昇時は 9 V×1.9 A = 17 W へスムーズに遷移。急激なカットバックでユーザーが「充電が止まった」と感じる挙動を防ぎます。
実測例(Ugreen MagFlow × iPhone 15 Pro): 0–50 %:平均 23.8 W / 30 分 80–100 %:漸減し最終 5 W でトップオフ
これにより 45 分で 80 %、65 分で 100 % 到達という結果を確認しました。
安全面と規格認証マークの見分け方
- FOD(Foreign Object Detection):金属異物を検知すると 100 ms 以内に出力を停止。Qi2 認証には必須試験項目。
- 熱シャットダウン:TX コイル温度が 60 ℃ に達すると自動停止→40 ℃で復帰。
- 認証ロゴの違い:
- 🅱 Qi2:15 W 固定。白地に黒 “Qi2” 文字。
- 🅱 Qi2‑25W:25 W 拡張。右下に “25W” サブマーク。
購入時チェックリスト
- 外箱・本体にロゴが刻印 or シールで貼付されているか
- USB‑C ポート入力仕様が 12 V / 3 A 以上か
- ケーブルが E‑Marker 対応(5A品)か
これらを満たさない製品は「Qi2 準拠」と謳いつつ実質 Qi1 の可能性があるため注意しましょう。